その成否で今後のウクライナ情勢の行方に大きな影響を与える。
第1の会議は、6月11-12日に「ウクライナ復興会議」(ドイツ)である。ここでは、「戦争の終結と復興のどちらが先かという区切りはない」(ドイツ政府関係者)とされ、「戦争」と「復興」を並行して進めていくことが前提で開催されている。世銀試算では、ウクライナの復興には今後10年間で4860億ドル(76兆円)がかかるとされる。会議では、ウクライナ国内の自治体や国内外の民間企業も交え、欧州の価値観も踏まえながら、いかに多面的に復興を推し進めていくかの議論がなされた。結果的には、110以上の案件で署名が行われ、エネルギーや防衛産業、インフラ復旧などの分野で計160億ユーロ(約2.7兆円)以上の支援で合意した。ある程度成功したと言えよう。
第2の会議は、6月13日―の「主要7カ国首脳会議(G7)」(イタリア)であり、制裁で凍結した約3000億ドルの活用が話しあわれた。その内容は、①凍結資産の「利益」の一部をウクライナに全面譲渡、②「利益」を担保に将来分も含めて前倒ししてウクライナ支援に活用などであったが、③「全額没収」してウクライナに全面譲渡などの論議があったが、約3000億ドルのロシア資産が生む利子を活用し、ウクライナに対し500億ドルの支援を行うことで大筋合意し、支援は年末までに実施される予定である。米国は単独で最大500億ドル拠出を予定していたが、他国が参画の意向を示したことを受け、米国の拠出額は大幅に減少する可能性がある。バイデン大統領は11月の米大統領選を控えG7で一定の合意に達したという成果を残したいえよう。
ゼレンスキーは2022年11月にG20サミット(於、インドネシア)で10項目「平和の公式10項目」を発表し、ウクライナはこれにこだわり、納得できる戦争の終わり方を模索してきた。
第三の会議が6月15〜16日の「平和サミット」(於、スイス)である。ここでは「公式」のうち、核の安全と食料安全保障、捕虜や強制連行された子どもたちの帰還の3点について合意形成をめざす。ここでのゼレンスキーの意図は、ロシアとの関係を考慮する国々との意見が衝突しそうな「公式」の項目の議論をできるだけ避け、より多くの国に参加を促すことを優先したためであり、その甲斐があってすでに100以上の国や国際機関が参加を表明している。ただし、ロシアと関係の深い中国は参加を見送る予定で、米国もバイデン大統領ではなくハリス副大統領の出席とされている。
しかし、平和サミットは「ロシアに『譲歩』するのではないかとの声もあり、サミットでの「共同声明」はウクライナが譲歩する形(例えばザポリージャ原発からのロシア軍の撤退や非武装化といった部分は削除)となる可能性がある。内容の薄まった声明が採択された場合のリスクとして、「ウクライナがロシアに譲歩する用意があるというシグナル」を送る可能性もある。
ゼレンスキーは、ウクライナ後の身の振り方を考える時期にきているのかもしれない。ゼレンスキーの人事や汚職対策をめぐり大統領に国民の不満が向き始めていて、ウクライナ国内での支持率は次第に下がってきている。さらには、ウクライナ前線の兵士が疲弊するなか、新たな動員や兵士の交代も国内で大きな議題になっており、ゼレンスキーはウクライナ戦争後を見据えた「三つの国際会議」で成果を得て軟着陸したいところであろう。