ロシアとの長引く戦争は、ウクライナを軍事技術開発の最先端の地にしている。ロシアとの軍事技術競争で、ウクライナでは国営ベンチャーキャピタルの資金援助を受けた民間技術開発が活況化している。ウクライナのフェドロフ副首相兼デジタル転換相は「現在の戦争は技術を巡るものだ。技術革新や戦場での変化は、日々起きている」と語っている。
 フェドロフは、ウクライナでロシアとの「デジタル戦」を指揮する。「技術は戦車やミサイルより強い」を信念に、SNS(交流サイト)や暗号資産(仮想通貨)を駆使して全世界に共闘を呼びかける。ウクライナがソ連から独立した1991年に生まれ、民主化に向かう激動期にハイテク人材として頭角を現した。オンライン広告会社の起業を経て、最年少の大臣として2019年発足のゼレンスキー政権に入閣。行政サービスを100%デジタル化する目標を掲げ、改革を先導している。
 ロイター通信によれば、先月、首都キーウにエンジニアや技術開発者が何百人も集まり、ロシアの安価な「自爆ドローン」を無力化する方法について、ウクライナ軍関係者と対策を話し合ったらしい。会合には陸軍高官や閣僚が、エンジニアや「技術オタク」らと交流し、ウクライナでは、今、国営ベンチャーキャピタルの資金援助を受けた民間の技術開発が活況を呈している。
ロシアは今回の戦争で、群れを成して標的まで巡航し、着弾と同時に爆発するイラン製ドローン「シャへド」を活用している。
ロシアの使用するイラン製ドローン「シャヘド」に対抗する最高のドローンや電子戦技術を発表した3つの専門家チームに、賞金として合計300万ドルが送られている。ロシアは5月、ウクライナを過去最多となる300機以上のドローンで攻撃した。ロシアの戦略は、空爆による送電網の破壊を昨年行ったことからわかるように、ウクライナのインフラ攻撃である。そこでの課題は、ロシアからの攻撃に備えてエネルギー供給網を守ることが技術開発者らの課題である。
イランのドローン「シャヘド」は、防空網による探知を回避できるほど低空を飛行する。そのナビゲーションシステムは、対ドローン電子戦兵器で撃墜するのが困難なほど強固である。西側諸国はミサイル攻撃に対抗するために高度な防空システムを供給しているが、1機5万ドルのドローンの大群を100万ドルのミサイルで撃ち落とすのは理想的ではない。「採算を合わせるため、「シャヘドを破壊する機器のコストをカットし続ける必要がある」「音響その他の手段を使った(ドローンの)探知や、実際の破壊について」官民あげて研究開発をしているフェドロフ副首相兼デジタル転換相は言う。
日本もウクライナに学ばねばならない。