―副大統領候補にバンス上院議員(39歳)を選出!―

7月15日に開催した共和党大会の会場は熱気にあふれ「お祭り会場」になっている。奇跡的に銃弾から逃れたトランプは神の加護が強いと伝説的なムードにつつまれる。こうなるとアメリカの世論は一気に流れる。
共和党大会では、ドナルド・トランプ前大統領(78)が正式に共和党の大統領候補に指名された。

共和党の政策としてトランプの主張が色濃く反映されエネルギー生産規制の撤廃や南部国境の「封鎖」などがかかげられた。また、トランプの政策が追い風になるとの期待から、建設機械大手キャタピラーや石油大手シェブロンといったエネルギー関連銘柄やIT企業銘柄などが値上がりした。トランプ銃撃は事件後、15日のニューヨーク株式市場ではトランプ再選確率が高まったとみた投資家の買いが集まった。トランプが立ち上げたトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)の株価が一時、前週末比50%高まで急騰。TMTGはトランプが立ち上げたSNS(交流サイト)「トゥルース・ソーシャル」の運営会社である。トランプによる規制緩和期待が高い暗号資産(仮想通貨)は1割上昇。賭けサイトで再選確率は69%まで高まった。

その共和党大会で、トランプは副大統領候補にJ・D・バンス上院議員(39)を指名した。ほとんど無名上院議員あるが、トランプが抜擢した。トランプは78歳の高齢であり、大統領の終わりには82歳となる。その間、もしもの時には大統領職をひきつぐ継承順位1位の地位になる。副大統領候補の選定にあたりトランプは「まず第一に、万が一を考えると良い大統領になると思える人物でなければならない」と不測の事態も考慮し、の副大統領を選んだとみられる。さらに、「長期にわたって熟慮し、他の多くの素晴らしい才能ある人材を考慮した結果、副大統領に最もふさわしい人物はオハイオ州のJ.D.バンス上院議員だと決定した」とXに書き込んだ。

バンスは、貿易・移民政策などで「米国第一」を唱えるトランプに近く、トランプ氏の推薦を受けて21年11月の上院選で初当選。さらに、バンス上院議員の副大統領指名は、大統領選挙の激戦州である中西部の白人労働者の地盤を固める狙いもある。バンスは中西部オハイオ州ミドルタウン出身。母親は薬物依存症で、祖母に育てられた。自著では「鉄鋼業の町で貧しい子ども時代を送った」と記す。大学に進んだ親族もほとんどいなく、高卒で米海兵隊に入り、イラクに駐留。米オハイオ州立大を卒業後、エール大法科大学院で博士号取得。法律事務所や投資会社などで勤務。さらに、著書「ヒルビリー・エレジー」を2016年に出版。トランプを白人労働者が熱狂的に支持した現象が理解できるとしてベストセラーとなり映画化された。安価な海外製品の流入で製造業が衰退した「ラストベルト(さびついた工業地帯)」を題材にした著作である。

トランプはSNSでバンスは「テクノロジーと金融の分野で大成功を収めた」と指摘。大統領選の結果を左右する激戦州の東部ペンシルベニア州や中西部ミシガン州、同ウィスコンシン州などに住む米国人を挙げ「米国の労働者や農家のために立派に戦ってきた」と述べている。

バンスは、「中国製品が米国の雇用や産業の脅威になっている」と主張し関税上げを唱える。「米国の産業をあらゆる競争から守る必要がある」「あらゆる産業にもっと積極的に関税をかけるべきだ」とトランプの主張と一致する。また、バイデン政権の寛容な移民政策を厳しく批判、さらにウクライナ戦争の早期終結を主張する。

日本に関連するところでは、トランプが日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収に反対するが、それに同調する「米国の安全保障、産業、労働者の未来を守るために全力を尽くす」おtの声明を発表している(23年12月)。

バンスは15日、共和党の全国大会に姿を見せた。副大統領候補になると正式に宣言されると「J.D.! J.D.!」と歓声が起こり、バンス氏は手を振って歓声に応えた。11月の大統領選でトランプが勝利すれば、のちに大統領になったニクソンの40歳と並んで過去2番目に若い副大統領になる。「バンスはアメリカンドリームの体現者であり、米政治にはまれな独創的な思想家」との評価も高い。

このように、アメリカではすでにトランプ政権がスタートしたような雰囲気に包まれている。