アメリカ大統領選挙とガザ戦争の終結。
イスラム組織ハマスが昨年10月7日にイスラエルを攻撃し、戦争が始まった。その後、CNNの発表ではガザ地区の死傷者3万5034人、負傷者数は7万8755人。瓦礫に埋もれたままの遺体は推定約1万人に上るとされる。停戦合意にはなかなか達していないし、イスラエルのネタニアフ首相もハマス殲滅を主張する。しかし、イスラエルも戦争継続の危機に直面している。
ガザでの戦争は11カ月目に突入し、イスラエルとヒズボラ(レバノンのイスラム教シーア派組織)との戦闘が一触即発となる中、イスラエル国内の予備役兵は限界に近づいている。イスラエルは兵力が不足しつつある。人口1000万人足らずの小国イスラエルは、危機に際して軍の機能を維持するため予備兵に大きく依存する。イスラエルの予備兵は疲弊し士気を喪失し、民間人が戦争に従事するためその分イスラエルの経済的損失は増す。もしイスラエルがハマスとの戦争に踏み切れば、同じ疲れ切った予備役兵の集団がハマスよりはるかに優れた軍事力を持つヒズボラと戦わなければならない。しかも、そうなれば戦域は中東全体に拡散する可能性が高く、長期戦となる。そうなればイスラエル軍の脆弱性もあらわになる。今後何年にもわたり国境付近でヒズボラや反イスラエル勢力の民兵たちと戦闘を繰り広げる可能性がある。
そういった状況の中で、アメリカの大統領選いかんで紛争終結に向かう可能性がでてきた。
バイデン大統領はガザ問題で、イスラエル批判を極力避ける姿勢をとり、歴代民主党政権の中で「最も親イスラエル的」と言われた。これに対して、黒人などマイノリティ(少数派)や若者層は、人道問題に敏感でバイデン大統領の姿勢に反発をして批判を強めている。
これに対して、ハリス副大統領は大統領選挙の勝利の鍵の一つとなるマイノリティや若者層の支持を挽回するために、イスラエルのネタニヤフ首相に対してより強い姿勢で臨んでいる。ハリスはネタニヤフ首相に対して、ガザ問題で「深刻な懸念を明確」にし「この9か月は破滅的だ。苦しみに無感覚になるのは許されない」と述べ、ハリスは、バイデン大統領の3段階からなるガザの新たな停戦案をネタニヤフ首相に「飲め」と迫った。
一方のトランプ前大統領も、「イスラエルはハマスとの戦争を終わらせるべきだ」し「あなたの国は多くの国の支持を失っている」と警告している。最も、トランプはユダヤ票には期待していない。米国のユダヤ人の71%が民主党員だと推定されており、トランプが米国のユダヤ人に友好的だと答えたのは31%に過ぎなかった。(ピュー研究所の世論調査)
このように、大統領選挙を通じてハリスもトランプもガザ戦争の終結をのぞんでおりその早期解決が望まれる。